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不動産ワーカーズインタビューVol.1 株式会社日本住宅企画代表 倉橋信二氏 「地上げ屋~時代の深淵~」(後編)
最終更新: 2020年6月18日
前編では地上げ屋としての来歴を全てお話いただきました。
後編ではなんと、交渉現場に密着取材させていただきました!
ぜひぜひご期待ください!
今も現場で戦いつづけるワケ
――会社が大きくなった今も交渉の現場に立たれていると聞いていますが本当でしょうか?
はい、本当です。
地上げが自分は好きなんでしょうね。自然と足が向かってしまう。
デスクに座って指示出しているだけは性に合わないんでしょうね。会社のプロジェクト工程表を見ているとうずうずしてきてしまう(笑)。
あ、今日も1件現場があります。良ければこの後一緒にどうですか?
――え? 取材させて頂いてもいいんですか?
構いません。というか是非です。
私は自分の「地上げ」という仕事にプライドを持っています。
最初にもお話しましたが、地上げというとやれダンプで突っ込むだとか、ヤの付く人が出てくるだとか、マイナスイメージを持たれすぎている。
――申し訳ありません。私もマイナスイメージを持っていました。
いやいいんです。仕方ないことなんです。過去は変わらない。
だけど私はこの「地上げ」のイメージを大きくプラスに持っていきたいと思っています。
いまやオイコラ言う時代は終わりました。丁寧に話して、理解して貰って、信頼関係を築く。
売った人も高く売れて、購入者のうちも事業が出来て利益が出せる。利害関係者全員が笑顔で取引できる、これが私の思う新しい「地上げ」です。
――「地上げ」という言葉のイメージそのものを塗り替えるわけですね。
そうです。だからこそ、その現場を取材してほしいのです。
我々がいかにフェアに、話をしてそして誰もが満足する取引が出来ているか。
そこを是非読者の皆様にも伝えて欲しいのです。
そして是非本文でもこの「地上げ」という言葉を前面に押し出すようにお願いいたします。
――嬉しいお申し出ありがとうございます。では現場を取材させて頂く前に、最後になりますが社長の
目標をお聞かせください。
地上げを通して日本を変える、を理念に事業をしている株式会社日本住宅企画は全国の土地最適化に向け日々邁進しております。
この活動を通し不動産の価値を底上げし、そして日本全体の価値も底上げする。これが最終目標です。
直近の目標は上場ですね。
読者の不動産業者の皆様、そしてそうでない皆様も株式会社日本住宅企画にお力添えを何卒お願いいたします。
密着!地上げの現場!
編注:本取材記事は上記のインタビュー後の内容でございます。
現場の空気や雰囲気、その交渉の流れなどをご理解いただきやすい内容にする為、編集部はなるたけ空気として描かせていただきます。
インタビュー記事とは雰囲気が大分変わりますが、そのまま続けて御覧ください。
倉橋氏は我々と共にインタビュー会場を出るとタクシーで現場へ向かった。
到着した場所は某主要駅から徒歩10分程度の住宅地。年期の入った木造住宅が所狭しと建ち並んでいる。
「ここの奥の一画です」
人1人がやっと通れるくらいの私道のどんつきにある木造住宅、ここが本日の交渉現場のようだ。
倉橋氏は呼び鈴を鳴らす。
しかし返答は無い。樣子を伺う倉橋氏だったが、おもむろに住宅と住宅の隙間にある電気メーターを指さした。
「ほら、メーター。回ってるでしょ。中にいるんですよ」
まあ、みていてくださいと倉橋氏は手で私達に下がるように告げた。そして、ドアをノックする。
「いらっしゃるんでしょ、前原さん。お話しましょうよ」
しかし返答は無い。倉橋氏は我々の方を振り返り微笑んだ。
「大丈夫です。まあみていてください」
そう言うと倉橋氏は少し下がり助走をつけ、ドアを思いっきり蹴り飛ばした。すさまじい音がなり、木造のドアにヒビが入る。
「おい出てこい!! 中にいるのはわかってるんだよ!!! 早くここ開けろや!!!」
そのままガンガンとドアを何度も強く蹴りつける。
しかし、中の動きは見えない。
倉橋氏は懐から金槌を取り出すと、ドアに向けて思いっきり振り下ろした。
「ぶち壊すぞ!!!!このクソドア!!!ドアノブ外すぞ!!」
倉橋氏がガンガン殴りつける度に、しぶきのように木片が舞った。ドアノブが取れてゴロリと転がった。
「殺すぞ!!!!!!!!!」
倉橋氏はそのまま窓という窓を金槌で叩き割る。しかし、中から人が出てくる気配は無い。
「舐めてんのかコノヤロー!!!俺はヤクザだぞ!!!!!」
倉橋氏はそう叫ぶとその場から走り去る。
我々が後を追うと、ダンプカーに乗り込む倉橋氏の姿が目に入った。
倉橋氏はシートベルトもつけずエンジンをかけると、アクセルを踏み込み私道へ突っ込む。
メリメリという轟音と共に私道に隣接する住居が破壊される。そしてそのままのスピードで私道最奥の交渉現場に突っ込んだ。
ドーーン、という飛行機が落ちてきたかのような音。
先ほどまでの交渉現場は無残に崩壊した。
倉橋氏はハンマーでダンプカーのフロントガラスを割り、這い出ると、半壊の交渉現場を掘り出して交渉相手である前原氏を引っ張りあげた。
そしてナイフを取り出すとメッタ差しにした。
「交渉終了だ」
あらゆる音が消えてしまった世界で倉橋氏は前原氏の殺害を終えるとそう呟いた。
全てを終えた倉橋氏がダンプの隙間から編集部の前に姿を現す。
「これが私の伝えたかったことです」
真っ白なシャツを血で染めた倉橋氏の虚ろな目は、我々にこの時代の深淵を思わせた。

編注:本取材は緊急事態宣言前の三月に行われました。
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